2026-07-01
お役立ちコラム
教育現場における線量管理システムの活用
杏林大学保健学部診療放射線技術学科では2025年度からクラウド型線量管理システムMINCADIを導入しましたので教育現場からの目線でそのメリットをご紹介いたします。
まず、導入の経緯ですが、元々はPACSの更新時期を迎えたことでPSP社のクラウド型PACS「NOBORI」を検討しており、そのタイミングで「MINCADI」をご紹介いただきました。この時まで線量管理システムといえばオンプレミス(自施設サーバーによる運用)だと思っていたのですが、クラウド型ならではの機能が教育現場との親和性が高いと感じて導入を決断しました。
教育現場で役に立つと感じた機能は大きく3つあります。
1つ目は、最新の臨床データを基にしたサンプルデータ(※)が提供されていることです。現在ではほとんどの養成校でCTなどのX線装置を保有しているかと思いますが、そこで撮影されるのは当然ファントムであり、DRL値の算出には不適切です。そのためDRLsを実習で取り扱う場合には何らかの方法で臨床の線量データを入手するか、教員がそれっぽいデータを作成することになります。しかし臨床のデータを入手するには煩雑な手続きが必要です。模擬データを作成するにしてもDRL値算出のためには統計処理を行いますから、それなりのデータ数と適度なばらつき、さらには外れ値までをいい塩梅で用意しなければなりません。その点でMINCADIでは臨床データを基にしたサンプルデータが提供されますのでこちらでデータを用意する必要がありません。サンプルデータには様々な部位における線量情報(CTDIvol, DLP, 管電圧, 管電流、スライス厚などの撮影条件)および患者情報(身長、体重、年齢)が含まれていますから、そのまま実習に利用することができます。さらにこのデータはMINCADI上で扱うだけでなくcsvとしてダウンロードすることができますから、表計算ソフトや統計解析ソフトでより詳細な処理を行うことも可能です。
※サンプルデータは学生実習用に教育機関限定で提供しており、医療機関には提供していません。
2つ目は他施設比較機能です。これは自施設と同じ機種を使用する他施設のデータを参照する機能です。DRLsで提供される基準値は統計処理された後のパーセンタイル値や中央値のみですが、より細かい検討を行うためには自施設のDRL値がとの程度の階級に位置するのかだけでなく、他施設のDRL値の分布を確認できることが非常に有益です。またその施設の線量情報と患者情報の統計値(最大値、最小値、平均値、中央値)を確認することができるので施設特有の患者の偏りなどの原因を考察することもできます。
3つ目はブラウザベースのインターフェイスであることです。学生実習の場合、大人数が同時に操作をしますので専用端末や専用アプリケーションが必要となるとその準備が非常に煩雑になります。一方でMINCADIは学内に設置したCUBE(クラウドとのゲートウェイとなる端末)へブラウザからアクセスするだけでユーザー数無制限ですべての機能が利用できます。そのためユーザー側が行う導入時の準備は学生が利用する端末のデスクトップにURLショートカットを配置するだけで済みます。これまでに別のアプリケーションを導入した際に50台のPCに1台ずつインストールをしていた経験を考えると本当にありがたいことです。またBYOD(Bring Your Own Device、学生個人のPC利用)にも問題なく対応できます。
他にもDICOM RDSRからの情報取り込み、Aline-ment機能(検査情報の自動振り分け)などの機能は実際の機能を見せながら説明できることで学生の理解向上に役立っていると感じています。
学生にDRLsを教え始めると、最初はDRL値が低いほど良いと勘違いする学生がたくさんいます。しかし生のデータを実際に処理してDRL値を算出する過程を体験し、値の意味を理解すると低すぎても高すぎても良くないのだと理解してくれます。さらにDRL値が低い、もしくは高い施設のデータを見せながら解説をすることで、線量を高い低いではなく最適か最適でないかで考えることができるようになっていると感じています。前回の赤羽先生のコラムにもあるように、ただ線量を下げれば良い時代は終わりました。必要に応じて線量を減らすのか、増やすのか、という判断を正しくできる診療放射線技師を養成するために線量管理システムを活用した実習はとても有用であると考えています。
杏林大学 保健学部 診療放射線技術学科
只野 喜一 先生